夢の2口コンロ

上京してから引っ越しはなんと1回。橋本の部屋と現在住んでいる部屋の2つしか、私は物件を体験していないのだけれど、次の部屋があるとするならば、どうしても叶えたい条件があり、その大きな1つに、2口コンロの存在がある。ちなみに、もう一つあげるとするならば、風呂トイレ別、である。
2口コンロ、なぜそんなに熱望するのかといえば、一口コンロが全くもって不便だからに他ならない。まず、私はご飯を圧力鍋で炊いているのだが、ご飯を炊いている間、他の調理が何もできない、ということは結構イラっとする。できれば、炊きたてのご飯とみそ汁を一緒に食べたい、というのが私、というか一般的日本人の見解ではないか、と思うのだが、一口しかコンロが無いとご飯を炊いている間他にガスを使えないため火を通す調理は進まないことになる。みそ汁の野菜が煮えない。こんなにも煮たいのに。だがしかし、私は長年のこのジレンマに、ある答えを見つけた。それは、みそ汁の具に煮えづらい食材を使わなければ、ご飯とみそ汁同時ほかほか状態での食事にありつける、という法則である。圧力鍋の加熱が終わってからみそ汁の鍋を火にかけ、調理開始となるのだか、圧力が抜けるまでの時間、およそ10分かかるかかからないかくらいの時間で煮える野菜をチョイスすればいいのだ。青菜のみ、とかにすれば楽勝である。が、しかし。ご飯とみそ汁の同時配膳には対応できることは判明したが、ご飯とみそ汁、そしてもう一品のおかずが同時にできたてで食べられる、という夢は、1口ではどうじても乗り越えられない、叶わないのだ。お姉さん、電子レンジで調理すればいいじゃない、という声が聞こえてきそうだが、奥さん、私、レンジ持ってないのです。正確に言うと、オーブンレンジのレンジ機能が壊れて使えないのです。要するに、調理はガス、オンリーなのです。
ご飯だけではない。私はお茶をやかんいっぱいに作ってそれを飲み続ける、という生活をしているのだが、このお茶を沸かしている間も、ガス台はお茶に占領される訳だから、他の調理は何もできない。お茶を沸かしながらみそ汁を作る、なんてことは不可能である。あと、パスタ。パスタを茹でながら、ソースを作る、なんてこともできないので、モコズキッチンなんか見てると「はあ~無理~」と思ってしまい、パスタを作る気は失せる。そのようにして、私の料理したい熱はガンガン冷却の一途を辿り、今はもう、ほぼ料理に対する情熱は無い。
料理に対する情熱が無いのは1口コンロのせいだけではなく、調理スペースが無い、という問題も大いに関係している。今のアパートのキッチンは、ガスの横がすぐ水道なので、なんと調理のためのスペースが全くない。このアパートの設計士はなぜこんな設計をしたのだろうか。こんな乱暴な設計するなんて、このアパートを設計した設計士、何考えてんだ!と本当に思う。生活する人のことを、そこで繰り広げられる生活のことをを全く想像していない、考えていないとしか思えない。流しの横がすぐガスて、人参どこで切れっておっしゃるの?ボウルをどこへ置けっておっしゃるの?設計した人、答え求む。
私はその対応策として、木の大きめのまな板を流しの角に置いて、そこでいろいろ切り、流しの細い枠を駆使してそこに物を置く、という策をとっているが、切ったものは十中八九、流しに落ちる。それを拾っていちいち水でゆすぐ。超めんどくさい。あーストレス。そんな日々なので、どんどん料理がめんどくさくなり、調理は適当になっていく訳です。でもきっと、本当に料理が好きな人であれば、こんな環境でも手を抜かずに料理するのでしょうね。つまり、私はそこまで料理が好きではない、ということなんでしょうね。
先日、最寄り駅のホームセンターで2口コンロが5000円で売られているのを発見した。魚焼きグリルがついていないタイプで、幅が558mm。私の部屋のガス台は幅530mmなので、あと38mm広ければ、もしくはコンロがあと少しだけ小さければ即買いなのだが、いかんせんサイズが合わない。だが何とか工夫して、狭いガス台に置けないものか、と考えた。横に置くのではなく、縦に置いたらどうか?もしくは、ガス台と流しの段差を何かで埋めて、その上に置いたらどうか。そうすれば、私の憧れの2口生活を手に入れられる!と、思うと夢膨らむ。でも結局、料理があまり好きではない説が濃厚の私は、夢を手に入れても料理しないかもしれないね、と思うと、5000円のガスコンロをレジに持っていくことがなかなか難儀なのである。